東京シングルトン的考察

「独りで立派に生きていける独身者」= シングルトン な私の日常とエンタメの雑記

嘔吐恐怖症が「ピッチ・パーフェクト」を見て少し改善された話

荒治療的な面もあるので、全ての悩みや不安障害を持つ方に効く保障はないのですが。生きていく上での長年の悩みだった嘔吐恐怖症から、「ピッチ・パーフェクト」を見たことによって、私は解き放たれました。

 

摂食障害とかではないのですが、私には“吐くのが異常に得意”という特異能力があります。

たしかにこどもの頃から身体は弱く、学校を休んだり、早退したりもしがちだったけど、「それにしても…」というくらいの高頻度で、幼い頃から、それもありとあらゆるタイミングで私は戻してきました。(とんだ才能ですね)

 

この経験と体質によって、忘れたくても忘れられない苦い思い出や感情がこれまで私の中には何度も蓄積され、それらを思い出してまた苦しくなり、そしてまた吐き気を催す… そんな悪循環の中にいた時期もありましたが、実はある日を境にそれらがすっと解けました。

 

それは私が何度も見返すほど大好きな映画「ピッチ・パーフェクト」を鑑賞中に、ひらめくようにとあることに気づけたからでした。

 

※ここから先には「ピッチ・パーフェクト」の軽いネタバレと衝撃的な嘔吐の記述がいくつか出てきます。一応言っときますね。言いましたからね!!

 

「ピッチ・パーフェクト」は、将来音楽業界で働きたいという夢を持つ主人公/ベッカが、ひょんなことから大学で“アカペラ”と出会い、仲間とともに大会優勝を目指す青春音楽映画です。

 

何も考えず、純粋に、とにかく楽しみたい時に見る作品の一つ(言わば中身がない作品)のように名前が上がることも多いこの作品ですが、私はかなり実力派な作品だと思ってとても楽しく、それも何度も見ています!

 

作中には所謂ご都合主義的な、フィクションだから許されるような突飛な展開や、ひたすらアホで下品なシーンもたくさんあって。だからこそ、実際なんにも考えずに見ることもできるんだけど、そんな細かい作品の良し悪しなんか、まじでどーーーーーーでも良くなるくらい、とにかくキャストの歌が皆べらぼうに上手いんです!

 

出てくる人出てくる人の歌が良すぎて、なんどでも聞いていたくなり気が付くと全部見た後に毎度もっかい再生ボタンを押している私がいる。

“アカペラ”がテーマのお話だから10分に一回くらいは誰かしらが歌ってるし、それぞれの楽曲のアレンジもめっちゃいい。BGMがわりに流し見してても楽しめます。

 

色んなことに疲れて何も頑張れない時でも、これを見るとどこかしらからたちまち力がみなぎりやる気が湧いてくる。日々の暮らしが立ち行かなくなるととりあえず「ピッチ」を見てめちゃ上手い歌唱と元気を貰う。「ピッチ」を定期的に摂取しないとダメ。「ピッチ」は私の麻薬。

 

それくらい大好きで、もう私の人生になくてはならないものの1つになったこの映画なんですが、作中に一箇所だけトラウマ級の衝撃的なシーンがあります。画的な意味でも、今回冒頭で書いた自分の辛い過去の記憶を掘り起こされるという意味でも。(いろんな意味でかけがえのない作品ですね)

 

この映画の中で、主人公/ベッカは大学で“ベラーズ”というアカペラ部に入ることになり、そこで一癖も二癖もある個性を持った変わった仲間たちと出会います。友達を作ることが苦手だったベッカは、“ベラーズ”の活動を通して時にぶつかり合いながら、最後にはかけがえのない友情と、最高のハーモニー(と、めっちゃ歌上手くて優しい彼氏)を手に入れるのです。

 

問題のシーンはその“ベラーズ”に所属する、リーダー/オーブリーにまつわる場面として登場します。しかも、結構序盤と、中盤の2回も。

オーブリーは、少しプライドの高い最高学年の女の子。スタイルも容姿も良くて、欠点なんてないように思えるのですが、実はベッカたちが入部する少し前のアカペラ大会で、歌唱中にマーライオンのようにステージ上からゲロをまき散らしてしまうという大失態を犯していました。(結果チームは敗退、しかもこのせいで新学期からの入部メンバーも集まらないという最悪の状態に)

 

このオーブリーの嘔吐シーンはハリウッド映画史に残るトラウマシーンと言っても過言ではないくらいの衝撃度なので、まじ未視聴の方は心してください。(コメディなので面白おかしくは描かれていますが!)

そして、何度も言うように「ピッチ・パーフェクト」は本当に大好きな映画ですが、個人的な事情から、私はこのオーブリーの場面だけは身を割かれそうな思いで毎度見ています。

 

人前で盛大に吐いたことがある人には痛いほどわかってしまう彼女の気持ち。恥ずかしさはもちろんあるんだけど、それよりも「またおなじことをしてしまったらどうしよう」とその後は吐くこと自体が怖くなる。そして、その不安がプレッシャーになってまた吐きそうになってしまう、という最悪の無限ループが始まるんです。その苦しみをどうしても一瞬思い出してしまうんで、ここだけはしんどいんですよね…

 

私も彼女と同じく(なんて言ったらあのプライドの高そうなオーブリーにはめっちゃ嫌がられそうだけど)人前で吐いたことがあり、それがしばらくトラウマになって心配で体調不良になってまた吐き気を催す、という経験があるから。

 

というかなんなら私の方が、きっとこれまで人前で粗相してしまった数でいうと多いくらいだと思います!小学生の頃から高校生の頃まで毎学年どこかの登校時間中に、なにかしらのタイミングで吐いたことがあるレベルなので彼女より確実に、ハイスコアだと思うよ!(全く自慢にならないけど!)

 

その中でも、中学校2年生の時、水泳の授業中にプールサイドで吐いた時の記憶は壮絶な一場面として今でも私の頭の片隅にこびりついてます。

5時限目のバタフライ、めっちゃ頑張って泳いでたら頭がくらくらしてお昼御飯が全部出ました。(この頃から「やばい吐きそう」の“予感”の精度が高まってきます)

 

この記憶、さらに最悪だったのが、この日私から出たものを授業をサボって見学していた同じクラスの性悪ギャルが掃除するはめになったんです。でも、「なんでこんなことーー(私が)」って言いかけたその子に、別のギャル(優しい)が「体調不良は仕方ない、自分だにもあるでしょ」的なことを言い返してくれたことがすごい思い出。

あたたかいギャルの優しいことばも、性格の悪いギャルの厳しい視線も同時に注がれた強烈な時間。あの時のなんとも言えない空気は今でもずっと記憶の隅に残っています。

 

そこで起こったことに対して、何を思うかも、何を言うかも全部“人による”。ギャルとか、自分が虚弱体質とか関係なくて、全部“その人”がどう感じるか。どんなことでも、それぞれの見方をする人がいる。

そして、二人の間に信頼や日々の関係性があれば、たとえ真反対の意見でも、自分の考えていることを包み隠さず相手にぶつけることができるんだ、と身をもって私が学んだ日でした。(そのあとも二人が全然わだかまりなく話していたので)

 

さて、このような強烈な苦しい機会に何度も見舞われた青春時代を過ごしたお陰で、大学生になる頃にはプロを名乗れるんじゃないかと思えるくらい吐くのが上手くなりました。

 

寮のトイレでも、学校近くの定食屋でも、これはまずいと、“予感”がしたらすぐに個室にかけこみ、周囲を全く汚さないまま保ち、何なら落ち着き払って消毒までしたうえでその場を離れる技術を身に着けたのです!(絶対に日常では誰にも自慢できない能力なので未だ人知れずですが、)

 

この能力は未だ現役で、ついこの前は久々の体調不良にも関わらず、開口部わずか20センチのビニール袋の中に綺麗に収めることに成功しました。全く周りが汚れていなくて、助けようとしてくれた友人も驚いてたレベル。

 

この時一緒にいた友人は、以降の一緒に過ごすはずだった時間も潰れてしまったし、衝撃的な場面を目撃させてしまったし、そのうえ何なら本人よりも恥ずかしい思いをさせてしまったかもしれないけど、それでも私のことをめちゃめちゃ心配して、また遊びにも行ってくれます。

 

その日、戻した疲れもあって静かに過ごしたくて、でも家に帰るととにかくなにも考えずにただ、暗い気持ちを明るくしてほしくて横になって「ピッチ」を見始めました。

「ピッチ」の中にはオーブリーが2回目に戻したことをきっかけに、“ベラーズ”のみんなでそれぞれの秘密を打ち明けあい、仲を深めるシーンがあります。

 

このシーンを見た時に、「あぁ、そっか。私が恥ずかしい姿を見せても、私のことを嫌いになんてならずに、心配して、支えてくれるんだ。そんな仲間が自分にもいるんだ。これまでも、みんなにたくさん救われてきたな」ってわかっていたつもりでいた、当たり前の有難さに改めて気づかされてめっちゃ泣きました。

 

悲しいかな、私は逞しい身体を持って生まれることはできませんでしたが、大事なものをこぼしまくっても、ぶちまけても側にいてくれる存在が私にもいる。そんな友人がいることは間違いなく私の何よりの財産で、かけがえのない私の人生の一部です。

そして、このことに気づけたことで、私は不安を忘れて、少しだけ前を向いて毎日を楽しむことができています。

 

ちなみに、このオーブリーの2回目のゲロシーン、人によっては非常に強い不快感を催す場合もあるかもしれないくらい汚い場面ではあるんだけど、その後に歌われる「Just the Way You Are」(ブルーノマーズのやつ)のアレンジがとっても綺麗なのでぜひじっくり観てほしいです。

 

んで、それにしてもよ。

 

「ピッチ・パーフェクト」をシリーズを通して何度も見返して、“ベラーズ”の絆の強さを見て毎度思うけど「Just the Way You Are」でいられて、その姿を見せられる存在がいるって、ほんと、最高!!!!まじで、なんでも言い合える友達は生涯かけて大事にしていこうな!!!

 

そして、今この文章を読んで、自分の周りにいてくれる「そんな大切な友達のことが愛しくなった」人、反対にまだそんな存在に出会えてないけど「そういう関係性の大切な誰かがいる人生に憧れる」人、とりあえず全員今すぐ「ピッチ・パーフェクト」見ようぜ!!!!!!

 

絶対後悔させないから!!!!!!!

(ただし食事中の鑑賞だけは非推奨)

 

今週のお題「こぼしたもの」

お題「わたしは○○恐怖症」