東京シングルトン的考察

「独りで立派に生きていける独身者」= シングルトン な私の日常とエンタメの雑記

「ホリデイ」のジュード・ロウっぽいシンパパとロマンスしかけた夜

「旅にハプニングはつきもの」とはよく言ったものですが、確かに自分も旅行をすると、何かしらの“思いもよらない出来事”に毎度遭遇している気がする。

 

そこで言われるハプニングとは、想定されやすいものだとロストバゲージや、けが、腹痛の類の不運なアクシデントが多いように思うけれども… こういうのはどうだろう。

ひと夏のアバンチュールという言葉があるように、旅先で生まれた一期一会であるはずの出会いに、何かしらの“縁”を感じてしまいそこから“何か”が生まれてしまう。そんな幸せなハプニングだって、なくはないはず。そう思うのは夢を見すぎだろうか。

 

いや、そこで起こるふとした展開に、日常の中ならあり得ない何かを期待もしてしまうのはきっと私だけじゃないはず。

それほど、旅は私達になにかしらの変化をもたらしてくれる。

 

例えば、映画「ホリデイ」は、旅先で起こるかもしれない“幸せなハプニング”を描いたとてもロマンティックな作品だと思う。

 

物語の舞台はクリスマスを目前にしたイギリスの雪降る田舎町と、アメリカ・ロサンゼルス(LA)で、ホリデーシーズンを前に恋に破れた二人の女性、LAに住むアマンダ(キャメロン・ディアス)とイギリスの郊外に住むアイリス(ケイト・ウィンスレット)が主人公。

「ホリデイ」はそんな二人が繰り広げる、2週間の恋模様を描いたラブストーリーだ。

 

このお話は、彼女たちが傷心を癒やすためホームエクスチェンジをし、2週間の期限付きでお互いの住む街をや暮らしを交換して休暇を過ごすところから始まる。

2人はそこで出会ったそれぞれの街に暮らす男性、アマンダの友人/マイルズ(ジャック・ブラック)とアイリスの兄/グレアム(ジュード・ロウ)と知り合い、彼らに惹かれはじめ、新天地で見つけてしまった恋の予感に戸惑いながらも、新しい出会いを楽しんでいく。

 

作中ではLAと英国、2つの場面を行き来しながら2組の男女のロマンスの行方を見守ることになるのだが、欧米のホリデーシーズンを描いた物語でもあるため、「クリスマスに見たい映画」として名前が挙がることも多いこの作品。

実際、物語を彩る劇伴音楽、雪の積もった英国の街並み、心温まるハッピーエンディングのおかげで見ているだけでクリスマス気分がめちゃめちゃ高まるので、私もクリスマスが近づくこの季節によく見返している。

 

作品自体の出来が素晴らしいのはもちろんではあるものの、これに加えて、たった2週間のホームエクスチェンジ中の出来事とは思えないくらいの展開の詰め込みようなのも、この映画を何度見ても飽きない理由の一つかもしれない。

 

私だったら2週間を寝て過ごし休暇をリフレッシュで終わらせてしまいそうなところだけれども。LAで暮らすことになったアイリスは、マイルズをはじめとしたご近所の住人達と仲良くなり、ホームパーティーまで開くコミュ強だし、英国でのんびり過ごすつもりだったアマンダは、出会ってすぐの男と意気投合して逢瀬を重ねた結果、彼の子どもとまで仲良くなる始末。

ラストでは、アイリスはLAまで追ってきた自分を傷つけ続ける浮気男を吹っ切ることに成功し、高校生の頃から泣けなかった心の強すぎるアマンダは、別れ際に涙を流したことをきっかけにグレアムへの気持ちに正直になる決心をする。

たった2週間で完璧に傷心から回復し、次の生活をスタートしている2人には尊敬の念しかない。

 

そしてそう、実はグレアムは2人の小さな娘がいるシングルファーザー。そのことを隠してアマンダと親密になってしまったことで、途中キャメロン・ディアスも混乱。

 

でも、それでも惹かれてしまうアマンダの気持ちがわかるくらい、ジュード・ロウ演じるグレアムがこれまたとんでもねぇイケおじで、しかも言葉のセンスも洋服のセンスもいい。とても子持ちには見えない余裕のある大人の男性で、それがまた罪深さに拍車をかけている状態。おまけに娘たちの世話も一生懸命見ているし、子育ても上手。そんな姿を見たら嫌いになんてならないよな~と勝手に納得してしまうレベルの仕上がりだ。

 

でもこれは本当に。かっこいいシンパパは、こどもと一緒にいる姿を見ると余計にかっこよく見えてしまう。この気持ちはよくわかる。

実は、先日旅行に行った時、私も似たような状態になりかけたから。

 

旅の非日常感が人を開放的にさせるのか、「ホリデイ」のアマンダとアイリスのようないつもの自分ならあり得ないような大胆な行動を、私も起こしてしまった。

 

事の発端は、旅行の帰り便の飛行機だ。

3時間にも及ぶフライトで、3人がけの座席の窓際のチケットを持っていた私。カップルや友達の2人組か、はたまた全員他人同士の1人が揃うのか、隣に座るのはどんな人が来るだろうとそわそわしていたら、そこに現れたのは小学生くらいの男の子を連れた男性だった。

 

少し離れて奥さんや他の家族などが座っているのかとも思ったが、どうやら2人だけのようで、会話を聞いていてもとても仲睦まじく、何より、その男の子の会話の受け答えから男性の子育てがとても上手いことがよく伝わってきた。

 

素敵な家族だな、と思いながらも音楽を聴いたり映像を見たり、別に隣の席同士で干渉しあうこともなく、好きなようにフライトの時間を過ごしているとあっという間に着陸の時間に。

 

無事目的地に着いた飛行機のドアが開き、たくさんの人が出口に向かい混雑する機内で、まさかの、その男性に声をかけられた。

かけられたと言ってもこの時はいきなりナンパされたとかではなく、座席上にある私の荷物を降ろすと提案してくれただけなのだけど、すごく親切に手伝ってくれた。

 

飛行機から降りた後、私が歩く少し先に手をつないで親子で歩く姿が見えた。

そしてその直後、仲いいんだな、と思って傍目で2人を見ながら歩いていると… 何かでぐずる男の子を先に行かせて、その男性がこちらをちらりと振り返ったのだ。

 

何かに引き寄せられた気がした。

 

ここだけの話を切り取って聞くと考え過ぎだと言う人もいるだろうけど、こういうときの人間のこういう勘はけっこう当たる。

 

予感の通り、空港の出口まで続く歩く歩道の上をわざわざ立ち止まって、私たちは少し話しをした。あの時間。機内の人込みを抜けたばかりの冷めない熱のせいか、飛行機から降り立った後のふわふわとした夢心地のせいもあったのだろうけど、今にも何かがはじまりそうなドキドキとした心の動きと少しの緊張を感じていた。

 

身のこなしや着ている洋服、何より会話のやりとりが素敵だったあのお父さん。

映画の中のジュード・ロウ程の完璧なビジュアルではなかったけれども、「ホリデイ」のグレアムを彷彿とさせるくらいのとてもいいパパだった。

 

ただ、歩く歩道ももうすぐ終わり出口の方向で別れに差し掛かるという頃に、なんだか先を急いだほうがいい気がし話を切り上げ、私がその場から離れてしまったためにこの先には何も続かなかった。

アマンダとグレアムのようなロマンスになり切るには、私はまだ、未熟だったらしい。

 

父親としてちゃんとしている姿を目の前で見ているのもあるからか、人としての魅力は短い時間でも十分に感じていたあの人。

思い返せば返すほど、「連絡先でも聞いておけばよかったかな」と思わなくもないが、たらればを言っても実のところはわからない。

 

ひと夏の恋はひと夏らしく後腐れなく終わるからいいのと同じで、相手の問題に踏み込まなかったからこそ、綺麗な思い出の素敵なお父さんの姿のままであの人を私の記憶に残しておけるのかもしれない。

 

しかし、私は今回のことで一つの可能性を知ることができた。

子持ちの男性との恋愛が上手くいけば、自分で出産をしなくとも、子供を育てることができるかもしれない。

そう思うと、今のところ“子供を産みたい”という気持ちを全く持たない私にとっては

シングルファーザーとの出会いは今後大いにアリである!!!

 

所謂“コブ付き”と言われ、人によっては恋愛関係においての懸念事項となってしまうかもしれない“シンパパ”だけど、私にとってはそれが利点になることに気づけた。

 

あの人とのロマンスは手にできなかったけど、人生の選択肢がまた一つ広がった夜だった。

 

 

お題「最近ドキドキしたこと」